親事業者の遵守事項⑦~下請代金の支払遅延の禁止②

2014-11-18

(4)「受領」と「提供」

支払遅延の起算点となるのが、受領日(役務の場合は提供日)です。受領については、親事業者が目的物を事実上支配下に置いた時点ですが、提供日は、実際に提供のあった日、役務がある程度の期間継続する場合には、その提供が終わった日になります。

従って、その日から60日以内に下請代金を支払わないと、支払遅延となります。

以上が原則ですが、これについては、若干の例外的な取扱いがガイドラインで認められています。

一つが、製造委託の場合です。

物品の製造委託の中には、下請事業者が親事業者の指定する倉庫に物品を預託し、親事業者がそこから随時出庫して使用するという場合があります。この場合、原則からすれば、倉庫に預託した時点で親事業者が受領したことになり、そこから最長でも60日以内に支払わなければならないということになるはずです。

ただ、このようなやり方の場合、下請事業者の生産の都合等で3条書面に記載された納期日前に納品がなされることもありますが、納期日前であっても、一旦受領してしまうと、そこから60日以内に支払わなければならないことになってしまいます。

そうならないために、親事業者からすると、納期日前に納品することは一切認めないという態度をとらざるを得なくなってしまいますが、これは必ずしも下請事業者の利益にならないと考えられます。そこで、以下の要件を満たす場合には、実際に預託した日ではなく、3条書面記載の納期日(納期日前であっても出庫した場合には出庫日)に受領したとする扱いが認められています。

① 納期日前に預託された物品については、親事業者や倉庫事業者を占有代理人とするなどして、下請事業者自ら占有しているという体裁をとること。

② 物品の所有権の移転時期を3条書面記載の納期日とすること。

③ ①と②が親事業者と下請事業者との間であらかじめ書面により合意されていること。

①を満たせば親事業者が自ら支配下に置いた(受領した)ことにならないのか、という点は疑問ではありますが、やむを得ないところでしょうか。

なお、これと似ておりますが、納期を定めず、親事業者が使った時点で受領したとする扱い(いわゆる「コック方式」)は、下請法上一切認められていないのでご注意下さい。

二つ目は、情報成果物作成委託の場合です。

情報成果物のうち、プログラムのようなものは、親事業者の元に納品されても、それが注文通りのものであるかどうかをすぐに判定することは通常困難です。

このような場合も、原則どおり、親事業者が受領した時点から60日以内に下請代金を支払わなければならないとすると、親事業者に酷となる場合も考えられるため、以下の要件を満たす場合には、親事業者が支配下に置いた時点を受領としなくてもよいとする扱いが認められています。

① 注文の品が、性質上、委託の仕様等に合致しているかどうかを外見上明らかにすることができないものであること。

② あらかじめ、親事業者と下請事業者との間で、注文の品を親事業者の支配下に置いた時点ではなく、注文の品が委託の仕様等に合致していることを検査で確認した時点で受領とすることに合意していること。

これは、すなわち、いわゆる検査のための受領を認めるということです。

ただ、この例外的な扱いは、納期を「検査の終了した日」とする扱いまで認めるものではありません。従って、3条書面には具体的な納期日を記載する必要がありますし、その納期日の時点で親事業者の支配下にあれば、検査が完了していなくても、受領したことになります。

三つ目は、役務提供委託の場合です。

役務提供委託も、原則からすると、役務の提供があった日から起算して60日以内に下請代金を支払わなければならないということになります。

ただし、役務には様々な形態があり、例えば、あるビルの清掃作業を月単位で下請事業者に委託するような場合、本来であれば、作業が終わったごとに支払期日を考える必要があることになりますが、それでは親事業者にとって煩瑣となってしまいます。

このため、以下の要件を満たす場合には、月単位で設定された締切対象期間の末日に、役務がまとめて提供されたものとする、という扱いが認められています。

① 下請事業者の提供する役務が同種のものであること

② 親事業者と下請事業者との間で、月単位で設定される締切対象期間の末日までに提供された役務に対して下請代金の支払いを行うということがあらかじめ合意され、その旨が3条書面に明記されていること

③ 3条書面に、当該期間の下請代金の額又は算定方法が明記されていること

なお、これにより認められる期間は最長でも1月であり、当然ですが、それを超える期間の設定は認められません。

(5)下請代金を振り込みで支払う場合

下請代金の支払いを銀行等の金融機関に対する振込によって行うことは当然認められていますが、暦の都合上、支払期日の末尾が金融機関の休業日に該当してしまうことがあります。

この場合、休業日の前に下請代金を支払えば、当然問題はないのですが、以下の要件を満たす場合には、60日を超える場合であっても、翌営業日払いが認められています。

① 順延する期間が土日など2日以内であること

② 親事業者と下請事業者との間で、下請代金の支払日が金融機関の休業日に該当する場合には翌営業日払いとすることが、あらかじめ書面で合意されていること

(6)その他の注意点

① 請求書の提出遅れ

実務上問題となりやすいのが、下請事業者からの請求書に従って親事業者が下請代金の支払を行っている場合に、下請事業者が請求書の提出を遅らせ、あるいは、請求書の提出を怠ったことにより、親事業者の支払いが遅れてしまった場合でも、支払遅延となるか、ということです。

結論から申し上げると、このような場合でも、公正取引委員会の考え方によれば、支払遅延となります。

親事業者にとって若干酷ではありますが、ご注意下さい。

② 下請事業者の要請により受領日を繰り下げる場合

似たようなケースですが、下請事業者からの要請に従って、受領の時期を遅らせることは認められるのか、という問題もあります。

これも、公正取引委員会の考え方によれば、認められないということになります。

下請事業者のも色々な事情があり、このような扱いを一切認めないということが、はたして下請事業者の保護になるのか、疑問なしとはいたしませんが、下請法とはこのようなものだと割り切っていただくしかありません。