カテゴリー : ‘独占禁止法’ の一覧

改正フランチャイズ・ガイドライン解説講座のご案内

2021-07-20

令和3年7月29日、公益財団法人公正取引協会様で、改正フランチャイズ・ガイドライン解説講座を担当させていただくことになりました。

内容は、フランチャイズ・ガイドラインの改正が実務に与える影響についてです。

時間は14時~16時で、前半は公正取引委員会の担当者の方が改正についての解説を行い、当職は後半の1時間を担当いたします。

関心のある方は、是非お申し込み下さい。

詳しくは、以下のページをご参照下さい。

https://www.koutori-kyokai.or.jp/chair/2021/2021FC.pdf

 

コンビニの24時間営業とフランチャイジーの労働者性

2019-04-24

今まで当たり前のように実施されていたコンビニエンスストアの24時間営業ですが、人手不足の深刻化と人件費の上昇に伴い、24時間営業もこのままでよいのか、疑問が呈されています。

報道によれば、今のところ、大手各社の温度差はあるものの、基本は24時間営業を維持する方向を考えているようですが、経産省に対応を求められたことから、4月25日にも本部は「行動計画」を発表する予定となっています。

この問題につきましては、加盟店オーナーの悲惨な状況をメインとする報道が多いように思いますが、なぜ、オーナーが悲惨な状況になるのかといえば、24時間営業を維持するためには夜間働いてくれるスタッフを確保する必要があるものの、それがままならない(人手が足りない)ということが根底にあると考えられます。

確保のために夜間の時給を上げれば、あるいは人員を集められるのかも知れませんが、今度はオーナーの収入が減ることになって、生活資金を十分に確保できなくなってしまいます。それを避けるためには、オーナー自らが夜間の人手不足を補うために働くことになり、オーナー自身やその家族にしわ寄せがいってしまうということになるでしょう。

24時間営業につきましては、そもそもそのようなものは必要ない、という意見もあります。利便性のみを追求することが果たしてよいことなのか、という観点からは傾聴すべき点もありますが、コンビニ事業という観点からすれば、「24時間営業をするのとしないのでは、どちらが儲かるのか」ということにつきるでしょう。

これも、各社の実験結果を待ちたいと思いますが、もし24時間営業を行う方が全体として利益が上がるのであるにもかかわらず、オーナーが苦労するというのであれば、これは本部とオーナーとの間の利益の配分が適切ではないおそれがある、ということになるでしょう。もし、この配分を適切に調整する仕組みがあるのであれば、24時間営業を仮に続けるとしても、問題は少なくなるように思います。

 

では、これはどうやって調整すればよいのでしょうか。

話は変わりますが、3月15日に、中央労働委員会が「オーナーは労働組合法上の労働者には当たらない。」という命令を出しました。内容につきましては、概ね首肯しうるものと個人的には考えておりますが、これも、考えようによっては、本部とオーナーとの利害を調整するための方法の一つであったように思います。

ただ、オーナーを労働組合法上の労働者とするという判断は、まだ確定はしていないようですが、少なくとも中央労働委員会としては取得ない、となりました。

団体交渉ができないとすると、外に方法があるかですが、公正取引委員会は、独禁法の適用を検討するとの報道がありました(コンビニ24時間、見直し拒否で独禁法適用検討 公取委)。これは、オーナーが事業者であるとした場合の調整方法になります。すでに締結した契約の見直しに独禁法の優越的地位の濫用を用いるのは、個人的にはどうなのかとは思いますが、このような運用がなされるようになると、独禁法が調整の仕組みとして機能することになるかも知れません。

 

個人的には、本部が法律で強制されてビジネスモデルを変更せざるを得なくなるというのは、望ましくないと思います。むしろ、長期的に事業を発展させるという観点から、利害を調整する仕組みを自ら取り入れるべきでしょう。

昨日のニュースですが、一部本部はそのような観点から、対応を検討するようです。(加盟店との利益配分見直し=「対応不十分だった」-ミニストップ

是非この流れを継続してもらいたいものです。

 

アマゾン価格と不当廉売

2013-04-17

今や売上からみると日本最大の書店となったといわれるアマゾン・ジャパンですが、同社は書籍だけでなく、電化製品、日用品などの他、衣料や靴などのファッション用品まで取扱対象を広げ、流通業界における一大勢力となっています。

そのアマゾンですが、昨年末頃、相次いでビジネス誌で特集が組まれました(週刊東洋経済12月1日号、週刊ダイヤモンド12月15日号等)。切り口は色々ありましたが、各誌とも共通していたのは、家電製品を取り扱うことになったアマゾンに対し、日本の家電量販店各社が非常に大きな脅威を感じているということです。

驚いたのは、日経ビジネス11月19日号によると、アマゾンは仕入れ値を下回る価格をサイト上で消費者に提示しているおそれがあるということです(同誌ではこれを「アマゾン価格」と命名しております)。

事の真偽はここでは問いませんが、気になるのは、このような行為が独占禁止法の不当廉売に該当しないのかということです。

不当廉売とは、

① 正当な理由がないのに、商品または役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給すること

又は

② ①に該当しなくても、不当に商品または役務を低い対価で供給すること

によって、

③ 他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある場合

のことです。

この「供給に要する費用」とは、公正取引委員会の考えでは「総販売原価」(仕入原価に販売費と一般管理費を足したもの)なので、そもそも仕入れ値を下回る価格は、この「供給に要する費用を著しく下回る価格」といえそうです。

現に、前述の日経ビジネスの記事にも、「継続的に仕入れ値を下回って販売するのは不当廉売の対象になり得る」という公正取引委員会の取引企画課長の談話が引用されています。

ただ、この方は、それに続いて、「ネットの場合、低価格販売が他の事業者にどれほどの影響を与えたかを算定しづらいため、公正な取引を阻害しているといいにくい」ともコメントしており、どうやら上記の③の認定が困難であると考えているようです。

公正取引委員会のこのような考え方は、やはり昨年12月10日に出された株式会社ヤマダ電機による株式会社ベスト電器の株式取得計画に関する審査結果にも見て取れます。

http://www.jftc.go.jp/pressrelease/12.december/12121002.pdf

これによると、アマゾンのようなインターネット販売を中心とする通販事業者と家電量販店との競争関係については、以下のように否定的です。

「インターネット販売を中心とした通販事業者による販売が家電製品の販売の一定割合を占めており、更に近年増加傾向にあることは認められるが、①ヤマダ電機から提出された資料によれば、自社の店舗に来店した顧客のうち通販事業者を買い回り先としている顧客は少数にとどまること、②家電量販店に対するヒアリング調査の結果によると、家電量販店と通販事業者は、ほぼすみ分けられており、通販事業者が緩やかな競争圧力となり得ても、強い競争圧力にはなっていないという意見が多くみられたこと、③通販事業者に対するヒアリング調査によると、家電量販店と通販事業者は価格面で全面的な競争関係にはないとしていること、④多くの通販事業者は、家電量販店と同等のアフターサービスや品ぞろえを提供しているわけではないこと等から判断すると、インターネット販売を中心とした通販事業者は、家電量販店に対し、ある程度の競争圧力となっている点は否定できないが、強い競争圧力になっているとまではいえないものと認められる。」

これは、住んでいる地域や念頭に置いている家電量販店によって異なるのかも知れませんが、ネットの価格を参考にしながら家電量販店で購入するかどうかを決めることは、私自身時々やっていることなので、個人的には余り納得がいきません。

また対アマゾンの急先鋒(?)のヨドバシカメラは、わざわざスマートフォン用のアプリを開発し、店頭でバーコードを読み取ると、アマゾンでの売値が分かるということまでしておりますが、公正取引委員会の立場からすると、余り意味のないことをしていることになるのでしょうか(私はそうは思いませんが・・・)。

なお、この件はアマゾンと家電量販店の問題にされておりますが、家電量販店(特に大手)は小売業として巨大な存在であり、特段保護が必要な存在とは考えられません。むしろ、アマゾン価格の他のネット通販事業者への影響の方がより問題ではないかと思います。

ただ、ネット通販事業は参入が容易と考えられ、他の価格戦略に対して柔軟に対応しうることから、少なくとも私が知る限りでは、他のネット通販事業者とアマゾンとが対立関係にあるという話は聞いたことがありません。むしろ、アマゾンに積極的に出店したりして、うまく共存できているのではないかと思います(アマゾンへの出店は一部家電量販店でさえ行っているので、事情は一層複雑です)。

これは、上記の要件でいえば、やはり③の「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」の問題になると思います。ガイドラインによれば、これは「他の事業者の実際の状況のほか、廉売行為者の事業の規模及び態様、廉売対象商品の数量、廉売期間、広告宣伝の状況、廉売対象商品の特性、廉売行為者の意図・目的等を総合的に考慮して、個別具体的に判断される」ことになりますが、

・ネット通販事業者の中でアマゾンが最も安いというわけではないこと。

・家電量販店との表示価格の比較でも、アマゾンの方が安いものはそれほど多くないこと。

・売れ筋などの特定の商品だけ、一定期間仕入れ値を下回って販売するような場合も考えられること。

・家電メーカーの側でも、ネット向けの製品を製造したり、ネット用の型番を設けたりして、ほぼ同じ商品でも、違うもののようにしていること。

などの事情によれば、この要件を認めるのはやはり困難ではないかと思います。

そもそも、不当廉売はなぜいけないのでしょうか?

不当廉売ガイドラインによると、「企業の効率性によって達成した低価格で商品を提供するのではなく、採算を度外視した低価格によって顧客を獲得しようとするのは、独占禁止法の目的からみて問題がある場合があり、そのような場合には、規制の必要がある。正当な理由がないのにコストを下回る価格、いいかえれば他の商品の供給による利益その他の資金を投入するのでなければ供給を継続することができないような低価格を設定することによって競争者の顧客を獲得することは、企業努力又は正常な競争過程を反映せず、廉売を行っている事業者自らと同等又はそれ以上に効率的な事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあり、公正な競争秩序に影響を及ぼすおそれがある場合もあるからである。」ということなのですが、これによれば、「企業の効率性によって達成した低価格」はいいが、「採算を度外視した低価格」は駄目、ということになるようです。

しかし、ここには、余り、企業の長期的な戦略やマーケティングの視点が感じられません。廉売をすることによって将来の需要増が見込めるのであれば、一定の場合に廉売を合理的としてもよいと思います。例えば、ある商品の品質を宣伝するための手段として廉売を行う場合と特定商品のユーザーが多いほどその商品の利便性が高まる場合などです。

アマゾンの場合は、前者の一類型とは考えられないでしょうか。全くの推測ですが、書店としてのイメージが強いアマゾンが取扱商品を拡大していることの宣伝の一環として「アマゾン価格」なるものを設定しているのではないかと思います。同社が送料を基本的に無料とするサービスを提供したのも、同じような理由ではないかと考えられます。

とすると、こうやってアマゾンの価格設定がマスコミで取り上げられること自体、同社の思うツボということになるのでしょうか。

拙文も同じくツボにはまったようですが・・・

 

下請法と優越的地位の濫用について②

2012-04-13

下請法違反の行為が優越的地位の濫用にもなるかどうかについてまず検討すべきは、下請法上の親事業者は、直ちに下請事業者に対して優越的な地位にあるといえるかどうか、ということになります。

親事業者と下請事業者は、①両者の資本金の額、及び②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託)によって、形式的に決まることになる一方、「甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても、乙がこれを受け入れざるを得ない場合」と、実質的に判断されるで、判断の枠組みが大きく異なります。

もちろん両者は重なる部分も多いと思いますが、重ならない場合も十分あり得ると考えられますので、親事業者が優越的な地位にはない場合には、勧告に従わなくとも、独占禁止法の違反として排除措置命令の対象とはならないことになります(そのような場合に勧告に従わないことを勧めるわけではありません、念のため)。

親事業者が優越的な地位にあるとした場合、今度は任意に代金の減額に同意したことをどのように評価するのかが問題になります(優越的な地位にある者からの要請なので同意してもそれが任意にしたとはいえないのではないか、という問題はありますが、ここでは任意に行われたとします)。

当事者の合意については、優越的地位の濫用ガイドラインにも個別に規定した個所がありますが、代金の減額に関する個所については触れられておりませんので、おそらく、任意であっても合意したというだけでは、優越的地位の濫用の代金の減額に該当することになる(該当する場合がある)と考えているものと思われます。

しかしながら、競争政策は効率性の問題であり、任意に事業者が判断したとすれば、それは尊重されるべきであって、法が公平性の観点から後見的に介入する必要はないと思います。

従って、任意に同意したことに対して、優越的地位の濫用を問題にするべきではないでしょう。

このように考えると、下請法と独占禁止法とで結論が異なることになりますが、法律が異なるので、結論が異なること自体は問題はないと思います。

ただ、これでは、勧告に従わずに済ます親事業者が出てくることになり、取り締まる側からすれば困ることになるかも知れません。

前述のとおり、おそらく公正取引委員会は、任意に合意したとしても、それだけで優越的地位の濫用に該当しないという扱いはしないという立場だと思います。これはこれで一貫しており、結論が異なるという結果も回避できるのでいいのかも知れません。

しかしながら、このような公平性を重んじるやり方が行き過ぎると、取引への過度の介入になり、結果的に効率性が損なわれることになるといわざるを得ないでしょう。

判断の分かれるところだと思いますが、私見では、任意に合意した場合、下請法も優越的地位の濫用もともに問題にしない、とすべきではないかと考えます。

 

下請法と優越的地位の濫用について①

2012-04-12

年度末の3月27日から30日にかけて、公正取引委員会は立て続けに3件、下請法違反による勧告を行いました。

いずれも下請代金の減額の禁止に違反したもので、内容的にはよくあるものですが(勧告の対象はほとんどすべてが下請代金の減額の禁止違反です)、いずれの親事業者も、下請事業者に対して下請代金の減額を要請し、それを了承した下請事業者に対して、下請代金の減額を行ったというものです。

http://www.jftc.go.jp/pressrelease/12.march/12032702.pdf

http://www.jftc.go.jp/pressrelease/12.march/120328.pdf

http://www.jftc.go.jp/pressrelease/12.march/120330.pdf

下請事業者の了解があっても、親事業者が禁止事項に該当する行為を行えば下請法の違反であるというのが公正取引委員会の立場なので、これはある意味当然なのですが、敢えて「了承した下請事業者」としているところからすると、了承しなかった下請事業者に対しては減額を行わなかったようです(もっとも、これら以外の減額の事案についても、ほとんどこのような表現が用いられていることから、単なる定型的な表現であって、余り深い意味はないかも知れませんが)。

とすると、了承するか否かの判断を下請事業者に委ね、了承しなかった下請事業者に対しても特段の不利益等が与えられていなければ、減額を了承した下請事業者は、任意に了承したものと考えられます。

ということは、公正取引委員会は、仮に下請事業者が全くの任意で減額に応じたとしても、下請法違反になると考えていることになります。このことは、公正取引委員会と中小企業庁の作成した下請法のテキストの以下のような記述からも分かります。

Q58: 下請事業者から当月納入分を翌月納入分として扱って欲しいと頼まれ、下請代金も翌月納入されたものとみなして支払ったところ、支払遅延であるとの指摘を受けたが問題となるか。

A: 本法の適用については、下請事業者との合意は問題とならない。下請事業者との合意の有無に関係なく、下請代金は受領した日から起算して60日以内に定めた支払期日までに支払わなければならない。

ところで、勧告に従わないとどうなるのでしょうか。下請法8条では、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)第20条(排除措置)及び第26条の6(優越的地位の濫用に係る課徴金)の規定は、公正取引委員会が前条第1項から第3項までの規定による勧告をした場合において、親事業者がその勧告に従ったときに限り、親事業者のその勧告に係る行為については、適用しない。」となっていますから、勧告に従わない場合、勧告の対象となった行為について、独占禁止法上の優越的地位の濫用の禁止にも該当するのであれば、排除措置命令が出され、場合によっては課徴金が課されることになるということになります(寡聞にして、そのような勇猛果敢な親事業者の事例を知りませんが・・・)。

下請代金減額の場合、優越的地位の濫用でいうと、独占禁止法2条9項5号ハが対応することになります。

ここまではいいとして、では、下請事業者が任意に応じた下請代金の減額が下請法に違反するとしても、優越的地位の濫用にも該当することになるのでしょうか。

これを次回に検討してみたいと思います。

 

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