下請法と優越的地位の濫用について②

2012-04-13

下請法違反の行為が優越的地位の濫用にもなるかどうかについてまず検討すべきは、下請法上の親事業者は、直ちに下請事業者に対して優越的な地位にあるといえるかどうか、ということになります。

親事業者と下請事業者は、①両者の資本金の額、及び②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託)によって、形式的に決まることになる一方、「甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても、乙がこれを受け入れざるを得ない場合」と、実質的に判断されるで、判断の枠組みが大きく異なります。

もちろん両者は重なる部分も多いと思いますが、重ならない場合も十分あり得ると考えられますので、親事業者が優越的な地位にはない場合には、勧告に従わなくとも、独占禁止法の違反として排除措置命令の対象とはならないことになります(そのような場合に勧告に従わないことを勧めるわけではありません、念のため)。

親事業者が優越的な地位にあるとした場合、今度は任意に代金の減額に同意したことをどのように評価するのかが問題になります(優越的な地位にある者からの要請なので同意してもそれが任意にしたとはいえないのではないか、という問題はありますが、ここでは任意に行われたとします)。

当事者の合意については、優越的地位の濫用ガイドラインにも個別に規定した個所がありますが、代金の減額に関する個所については触れられておりませんので、おそらく、任意であっても合意したというだけでは、優越的地位の濫用の代金の減額に該当することになる(該当する場合がある)と考えているものと思われます。

しかしながら、競争政策は効率性の問題であり、任意に事業者が判断したとすれば、それは尊重されるべきであって、法が公平性の観点から後見的に介入する必要はないと思います。

従って、任意に同意したことに対して、優越的地位の濫用を問題にするべきではないでしょう。

このように考えると、下請法と独占禁止法とで結論が異なることになりますが、法律が異なるので、結論が異なること自体は問題はないと思います。

ただ、これでは、勧告に従わずに済ます親事業者が出てくることになり、取り締まる側からすれば困ることになるかも知れません。

前述のとおり、おそらく公正取引委員会は、任意に合意したとしても、それだけで優越的地位の濫用に該当しないという扱いはしないという立場だと思います。これはこれで一貫しており、結論が異なるという結果も回避できるのでいいのかも知れません。

しかしながら、このような公平性を重んじるやり方が行き過ぎると、取引への過度の介入になり、結果的に効率性が損なわれることになるといわざるを得ないでしょう。

判断の分かれるところだと思いますが、私見では、任意に合意した場合、下請法も優越的地位の濫用もともに問題にしない、とすべきではないかと考えます。