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改正フランチャイズ・ガイドライン解説講座のご案内
令和3年7月29日、公益財団法人公正取引協会様で、改正フランチャイズ・ガイドライン解説講座を担当させていただくことになりました。
内容は、フランチャイズ・ガイドラインの改正が実務に与える影響についてです。
時間は14時~16時で、前半は公正取引委員会の担当者の方が改正についての解説を行い、当職は後半の1時間を担当いたします。
関心のある方は、是非お申し込み下さい。
詳しくは、以下のページをご参照下さい。
https://www.koutori-kyokai.or.jp/chair/2021/2021FC.pdf
コンビニの24時間営業とフランチャイジーの労働者性
今まで当たり前のように実施されていたコンビニエンスストアの24時間営業ですが、人手不足の深刻化と人件費の上昇に伴い、24時間営業もこのままでよいのか、疑問が呈されています。
報道によれば、今のところ、大手各社の温度差はあるものの、基本は24時間営業を維持する方向を考えているようですが、経産省に対応を求められたことから、4月25日にも本部は「行動計画」を発表する予定となっています。
この問題につきましては、加盟店オーナーの悲惨な状況をメインとする報道が多いように思いますが、なぜ、オーナーが悲惨な状況になるのかといえば、24時間営業を維持するためには夜間働いてくれるスタッフを確保する必要があるものの、それがままならない(人手が足りない)ということが根底にあると考えられます。
確保のために夜間の時給を上げれば、あるいは人員を集められるのかも知れませんが、今度はオーナーの収入が減ることになって、生活資金を十分に確保できなくなってしまいます。それを避けるためには、オーナー自らが夜間の人手不足を補うために働くことになり、オーナー自身やその家族にしわ寄せがいってしまうということになるでしょう。
24時間営業につきましては、そもそもそのようなものは必要ない、という意見もあります。利便性のみを追求することが果たしてよいことなのか、という観点からは傾聴すべき点もありますが、コンビニ事業という観点からすれば、「24時間営業をするのとしないのでは、どちらが儲かるのか」ということにつきるでしょう。
これも、各社の実験結果を待ちたいと思いますが、もし24時間営業を行う方が全体として利益が上がるのであるにもかかわらず、オーナーが苦労するというのであれば、これは本部とオーナーとの間の利益の配分が適切ではないおそれがある、ということになるでしょう。もし、この配分を適切に調整する仕組みがあるのであれば、24時間営業を仮に続けるとしても、問題は少なくなるように思います。
では、これはどうやって調整すればよいのでしょうか。
話は変わりますが、3月15日に、中央労働委員会が「オーナーは労働組合法上の労働者には当たらない。」という命令を出しました。内容につきましては、概ね首肯しうるものと個人的には考えておりますが、これも、考えようによっては、本部とオーナーとの利害を調整するための方法の一つであったように思います。
ただ、オーナーを労働組合法上の労働者とするという判断は、まだ確定はしていないようですが、少なくとも中央労働委員会としては取得ない、となりました。
団体交渉ができないとすると、外に方法があるかですが、公正取引委員会は、独禁法の適用を検討するとの報道がありました(コンビニ24時間、見直し拒否で独禁法適用検討 公取委)。これは、オーナーが事業者であるとした場合の調整方法になります。すでに締結した契約の見直しに独禁法の優越的地位の濫用を用いるのは、個人的にはどうなのかとは思いますが、このような運用がなされるようになると、独禁法が調整の仕組みとして機能することになるかも知れません。
個人的には、本部が法律で強制されてビジネスモデルを変更せざるを得なくなるというのは、望ましくないと思います。むしろ、長期的に事業を発展させるという観点から、利害を調整する仕組みを自ら取り入れるべきでしょう。
昨日のニュースですが、一部本部はそのような観点から、対応を検討するようです。(加盟店との利益配分見直し=「対応不十分だった」-ミニストップ)
是非この流れを継続してもらいたいものです。
コンビニのオーナーは労働者か?
少々前になりますが、本年4月16日、東京都労働委員会で、大手コンビニエンスストア・ファミリーマートの加盟者は労働組合法上の労働者に当たるとの判断が下されました(以下「命令」といいます)。昨年3月20日にも、やはり大手コンビニエンスストアのセブン-イレブン・ジャパンの加盟店主らについて、岡山県労働委員会で同様の判断がなされておりますので、はじめてそのような判断がなされたというわけではありませんが、コンビニのオーナーは労働者なのか?ということが改めて議論されることになりました。
東京都労働委員会(都労委)の開示するところによりますと、命令で、都労委が加盟者について労働組合法上の労働者に該当するとした理由は、以下のとおりです(表現は多少変更しております)。
- フランチャイズ契約であっても、その実態においてフランチャイジーがフランチャイザーに対して労務を提供していると評価できる場合もあり得るのであるから、フランチャイズ契約との形式であることのみをもって、労働組合法上の労働者に該当する余地がないとすることはできない。
- 本件における加盟者の就労等の実態を鑑みると、加盟者は、本部に対して労務を提供していたといえる。
- そして、本件における加盟者が労働組合法上の労働者に当たるか否かは、以下の①~⑥を総合的に考慮して判断すべきである。
①事業組織への組入れ
②契約内容の一方的・定型的決定
③報酬の労務対価性
④業務の依頼に応ずべき関係
⑤広い意味での指揮監督下の労務提供及び一定の時間的場所的拘束
⑥顕著な事業者性等の諸事情があるか否か
- ①本部が運営するファミリーマート・システムは、加盟者の労務提供なしには機能せず、加盟者が、本部の業務遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に組み入れられている。
- ②加盟者は、ファミリーマート店が全国的にどこでも同一のシステムと統一的なイメージで経営・運営されるべきであるという要請により、定型的な契約を余儀なくされている。
- ③加盟者の得る金員は、労務提供に対する対価又はそれに類する収入としての性格を有するものといえる。
- ④本部からの指示、指導や助言、推奨に従わない場合に再契約を拒否される不安等から、加盟者は、本部の個々の業務の依頼に応じざるを得ない状況にある。
- ⑤加盟者は、広い意味で、本部の指揮監督の下に労務を提供していると解することができ、その労務提供に当たっては、時間や場所について一定の拘束を受けているということができる。
- ⑥加盟者には、自らの独立した経営判断に基づいてその業務内容を差配して収益管理を行う機会が実態として確保されているとは認め難く、実態として顕著な事業者性を備えているとはいえない。
- これらの諸事情を総合的に勘案すれば、本件における加盟者は、本部との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。
労働組合法上、労働者とは、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これの準ずる収入によって生活する者」と定義されています(同法3条)。
労働者については、労働基準法や労働契約法でも定義されておりますが、労組法上の労働者の特色は、労働組合を結成した上で、団体交渉を行うことを認めるべきかどうか、という観点から判断されるものであり、必ずしも労働契約を締結した者に限らない、とされています(菅野「労働法」p590~591)。
つまり、労基法上の労働者とはいえなくても、労組法上の労働者といえることはあり得る、ということになるのです。
このため、労働契約以外の契約により労務の提供を行う者が、労組法上の労働者に該当することを肯定する判断がなされることは珍しくなく、特に、最近の最高裁判例では、その傾向が強いように思います(新国立劇場運営財団事件(最判平成23年4月12日)、INAXメンテナンス事件(最判平成23年4月12日)、ビクター事件(最判平成24年2月21日))。
上記の都労委によって採用されている①~⑥の要件については、基本的に上記の最高裁判例によっても採用されているものとなります。
その点で、都労委がこの①~⑥の要件によって、コンビニのオーナーが労組法上の労働者に該当するかどうかを判断したことは、当然のことといえるでしょう。
ただ、その当てはめが適切かどうかは、②を除き(フランチャイズ契約ですから、契約内容が、一方的かつ定型的に決められているというのは、ある意味その通りなので)、個人的には疑問がないわけではありません。
まず①ですが、これは、本部の事業に必要な労働力として組織に組み入れられているといえるかということですが、加盟者に対する本部の事業とは、加盟者の行うコンビニエンスストア事業に対する指導・援助になるはずです。とすると、指導・援助される側の加盟者の事業が本部の事業に組み入れられているというのは、あり得ないように思います。
この点、命令は、「ファミリーマート・システムは、加盟者の労務提供なしには機能せず」としておりますが、「フランチャイズ・システム」とは、「あるフランチャイザーが多数のフランチャイジーにフランチャイズを付与することにより、それらの個々の要素が総合され、全体として一つのまとまりをもち、独自の流通組織として機能する仕組をいう。」(川越憲治「フランチャイズシステムの法理論」p30)とされており、フランチャイザーの事業そのものではありません。
命令は、この点を混同しているように思います。
③は、労組法における労働者の定義からすると、最も重要な部分になると思われますが、なぜ、労務の対価といえるのかについては理由が書いてないのでよく分かりません。ただ、加盟者が得るのは、自らの事業から得られる利益であることからすれば、労務の対価でないことは明らかでしょう。
確かに、大手コンビニエンスストアの採用する粗利分配方式とオープン・アカウント制度では、加盟者は日々の売上金を一旦本部に送金し、そこから諸費用を控除の上、契約で加盟者が受け取ることになっている割合の粗利益を得ることになりますが、だからとって、加盟者はこの金員を自らの労務の対価として受け取っているわけではありません。
このことは、どんなに長時間働いても、売上が上がらなければ、受け取る金額は減りますし、全ての作業を加盟者自ら行わなくても(アルバイトに任せても)、売上が上がれば受け取る金額が増えることからも明らかだと思います。
なぜこのような認定になったのかは分かりませんが、ひょっとすると、大手のコンビニエンスストアで採用されている最低保証制度(加盟者に対して一定の総収入を保証する制度)があることによって、必ずしも売上(利益)だけで加盟者の受け取る金銭が決まっていないことから、労務に対価に近いものだと認定されたのかも知れません(この制度は加盟者の経営の安定を図るためのものであり、労務の対価を認定する根拠になるとは考えにくいですが・・・)。
いずれにしても、オープン・アカウントをやめると、加盟者は本部から受け取る金銭がなくなりますが、そのとたんに労働者ではなくなるというのも奇妙なものといわざるを得ないでしょう。
④も、本部が色々と指示するのは、加盟者のコンビニエンスストア事業のためであって、何も、本部の行う事業をさせようとしているわけではないので(実際にも、加盟者は本部の事業をしていないと思います)、おかしな認定だといわざるを得ないように思います。
繰り返しになりますが、本部から加盟者になされる「指示、指導や助言、推奨」は加盟者の事業に対してなされるものであり、それによって再契約を拒否されるかどうか不安に思うことはあるかも知れませんが、だからといって加盟者が本部の業務を行わざるを得ないということには全くなりません。
⑤についても、このような認定に至った理由が分かりませんが、「加盟者は、広い意味で、会社の指揮監督の下に労務を提供していると解することができ」という部分は、フランチャイズ契約に従って、事業を行っているということを、広く解釈すると、そのようにいうことも出来る、ということであれば、そう言えなくもないでしょう。ただ、どう解釈しても、フランチャイザーに労務を提供していると解することはできないように思います。
「その労務提供に当たっては、時間や場所について一定の拘束を受けているということができる」という部分も、フランチャイズ契約に従って事業をしなければならないという範囲では、その通りと言えなくもありませんが、やはり、労務を提供しているということにはならないと思います。
最後の⑥ですが、「加盟者には、自らの独立した経営判断に基づいてその業務内容を差配して収益管理を行う機会が実態として確保されているとは認め難く、実態として顕著な事業者性を備えているとはいえない」というのは、通常の事業に比べて、拘束される度合いが大きいという点では、確かにそうでしょうが、その機会さえ確保されていないということは、いくら何でも言い過ぎのように思います。
命令は、加盟者の店舗の収益管理は全て本部が行っており、一切加盟者には関係ないといいたいのでしょうか。
今後、この認定が維持されるのかどうかは分かりませんが、コンビニの三点セット(粗利分配方式、オープン・アカウント、最低保証制度)がこの認定を導いたのだとすれば、少々皮肉なことのように思います。
加盟者の保護を考えるということは意義のあることだと思いますが、それを労働法制の中で考えようとした今回の命令は、やはり無理があるのではないでしょうか。
少なくとも個人的には、そう思います。
フランチャイズ契約上の競業避止義務③
③ 契約上の対処
契約終了後の競業禁止期間が有限であるという問題に対処する方法として考えられるのは、
ア 競業禁止期間の開始時期を遅らせる。
イ 容易に競業に踏み切れないようにする。
というものです。
まずアですが、これは、競業禁止期間の開始時期を、フランチャイズ契約終了の際に、フランチャ契約上実行することがフランチャイジーに義務づけられている作業を全部終えた時点からにするというやり方です。
通常、競業禁止期間の開始時点は、「フランチャイズ契約終了の日から」となっていることが多いと思いますが、この場合、契約終了の時点で既に違反行為を行っている場合であっても、それとは無関係に競業禁止の期間が進行することになってしまいます。
期間の長さ自体に前述のような制限があるので、これに対処するには期間の開始事前を遅らせることしかありません。そこで、フランチャイズ契約上、フランチャイズ契約終了後の競業禁止期間の開始時点を、元フランチャイジーが事業活動を一切停止した時点から、などとするのです。一旦止めた後、競業行為を開始する元フランチャイジーも考えられることから、競業禁止の期間について、判決が確定した日から別途追加で起算されるというやり方も考えられるでしょう。
次に、イですが、これは、フランチャイズ契約上、競業避止義務違反や守秘義務違反があった場合の損害賠償額をあらかじめ定めておくという方法です。これらの違反の場合、違反行為が認定できたとしても、それによって一体いくらフランチャイザーに損害が生じたのかを立証することは難しいこともありますし、例えば、ロイヤルティ相当額が損害であるとした場合(これは通常容易に認められるものと思われます)、前述のとおり、差止請求自体に限界があるため、その程度の金額を支払えば競業行為ができるということになって、かえって元フランチャイジーに対し、違反行為を誘発することにもなりかねません。
そこで、フランチャイズ契約で、競業禁止行為の違反があった場合に、相応の金額(計算式でももちろんよいでしょう)を損害賠償額として定め、違反があった場合の損害賠償請求を容易にするとともに、元フランチャイジーに対して、違反行為をしないように思いとどまらせるという方法が通常とられることになります。これを法律的には「損害賠償額の予定」といいます。
ちなみに、これを定めた民法の条文は、以下のとおりです。
第420条(賠償額の予定)
一 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
二 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
三 違約金は、賠償額の予定と推定する。
損害賠償額の予定がなされると、請求する側は、損害がいくらあったのかを立証しなくてもよくなります。また請求された側は、損害が全くなかったことや、実際の損害額がそれよりも少ないことを立証したとしても、責任を免れることができなくなります。もっとも、損害が予定額より多かったとしても、多い金額を請求できるわけではありません(ただし、これについては契約上対処が可能です)。
損害賠償額をフランチャイズ契約で予定する場合、問題になるのが損害賠償額をいくらにすればよいのかということです。金額が多ければ多いほど、フランチャイザーにとっては有利といえますが、余りに高い金額を設定すると、裁判所に無効とされるおそれがあるからです。
ただ、そもそもフランチャイジーの側が違反行為をしなければ支払う必要のない金銭であること、余り低額だと、フランチャイジーの側にかえって違反行為を誘発することになることなどの理由からすれば、それなりに抑止効果のある金額を定めるべきではないかと思います。必須ではないですが、できれば、その金額を算定した根拠を示せるとよいでしょう。
フランチャイズマネジメント講座・公開講座のお知らせ
本年9月から、社団法人日本フランチャイズチェーン協会による「フランチャイズマネジメント講座」がスタートいたしますが、それに先立ち、無料の公開講座が実施されます。
開催日は平成24年7月27日(金)で、時間は午後1時30分から午後5時までです。
同講座で実際に講師をされる予定の講師陣の講義を直に体験できる貴重な機会だと思いますので、関心をお持ちの方は、是非ご参加下さい(先着20名までで、参加者の方には、講座の割引があります)。
詳しくは、日本フランチャイズチェーン協会までお問い合わせ下さい。