親事業者の遵守事項⑦~下請代金の支払遅延の禁止①
(1)支払遅延とは
親事業者は下請代金を支払期日までに全額支払わなければなりません。
支払期日までに支払わないと「下請代金の支払遅延」といわれる違反行為になります。
下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」ですから、支払遅延は、下請法の違反行為の代表的なものと言ってよいでしょう。
平成25年度の処理状況を見ても、支払遅延が1488件と、禁止事項の違反行為の66%を占めております。
支払遅延は、下請代金を支払期日までに支払わないと直ちに成立しますので、その意味で非常にシンプルな違反行為といってよいでしょう。
このため、支払遅延のポイントは、「下請法における支払期日」とは何か、ということになります。そして、これさえ守っていれば、支払遅延になることはありません。
(2)下請法の定める支払期日
下請代金の支払期日は、下請法2条の2に定められています。
第2条の2(下請代金の支払期日)
下請代金の支払期日は,親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日。次項において同じ。)から起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
2 下請代金の支払期日が定められなかつたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して60日を経過した日の前日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。
まず、第1項ですが、これは、下請代金の支払期日を決める際には、「給付を受領した日」(役務の場合は「役務の提供をした日」)から60日以内にするよう求める条項です。条文上は、「できる限り短い期間」とするようにとなっておりますが、これから分かるように、下請代金は、どんなに長くとも、物を受け取った日(役務の場合はその提供をした日)から60日以内に支払わなければならないということになります。下請法の大きな特徴の一つと言ってよいでしょう。
下請代金の支払期日は、通常、親事業者と下請事業者の契約で定めることになりますが、その期日を、物を受け取った日から60日以内に定めれば、支払期日は契約どおりとなります。
ところが、下請代金の支払期日を誤って、ものを受領した日から60日を超えて定められてしまった場合、第2項により、自動的に、60日を経過する日の前日が支払期日とされてしまいます。
また、うっかり下請代金の支払期日を定めないと、同項により、物を受け取った日に直ちに下請代金を支払わなければならなくなってしまいます。
いずれの場合でも、下請代金の支払期日を経過して支払わないと、支払遅延となります。
(3)支払遅延と遅延利息
なお、この点多少紛らわしいのが、年14.6%の遅延利息(第4条の2)の支払いです。
支払遅延は、下請代金を支払期日までに支払わないと成立しますが、遅延利息の支払いは、受領後60日を経過した日からになります。従って、例えば、受領の日から30日以内に支払うと契約した場合、30日を経過してなお支払わないと支払遅延となりますが、下請法上の遅延利息は、その後60日を経過するまでは課されないことになるのです。