消費税転化対策特別措置法・ガイドライン案の公表①

2013-08-13

平成25年6月5日に成立し、10月1日から施行される「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(消費税転嫁対策特別措置法)のガイドライン案が、7月25日に公表されました。

http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/jul/gl_pabukome.files/20130725-3.pdf

http://www.caa.go.jp/representation/pdf/130725premiums_2.pdf

http://www.caa.go.jp/representation/pdf/130725premiums_4.pdf

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/250725tenka2.pdf

このガイドライン案は、8月23日締切のパブリックコメント手続きを経て、内容が確定する予定です。

 

この法律につきましては、法案の公表時に検討いたしましたが、ガイドラインによってどのように運用されるのかについても、前回の記事をもとにして、みてみたいと思います(一部重複いたしますが、ご容赦下さい)。

 

1.当事者

この法律に登場するのは、「特定事業者」「特定供給事業者」「中小事業者」です。

(1)特定事業者

まず特定事業者は、以下のいずれかです。

① 大規模小売事業者

② 特定供給事業者から継続して商品または役務の供給を受ける大規模小売事業者以外の法人事業者

①の大規模小売事業者は、一般消費者が日常使用する商品を取り扱う小売業者(コンビニなど、フランチャイズ・システムによる場合を含みます)以下のいずれかに該当する者になります。

a 前年度の売上(加盟者の売上を含む)が100億円以上である者

b 床面積が1500平方メートル以上(東京23区及び政令指定都市にあっては3000平方メートル以上)の店舗を有する者

消費者相手の小売業を行っていれば、生活協同組合や農漁協同組合も含まれます。また、店舗を持たない通販業者も含まれることになります。

②は、大規模小売事業者ではないものの、特定供給事業者(資本金3億円以下の事業者(個人も含みます))から継続して商品または役務の供給を受ける法人事業者が該当することになります。

「継続して」という要件がありますので、一回限りの取引には適用がありません。

 

(2)特定供給事業者

特定供給事業者は、以下のいずれかの法人事業者です。

① 大規模小売事業者に継続して商品または役務を供給する事業者

② 大規模小売事業者以外の特定事業者に継続して商品または役務を供給する資本金3億円以下の事業者(個人を含む)

 

(3)中小事業者

中小事業者は、以下のいずれかになります(なお、⑤~⑦は、現時点では政令が確定していません)。

① 主として製造業、建設業、運輸業などの事業(卸売業、サービス業、小売業は除く)を営む資本金3億円以下の会社とこれらを営む従業員数300人以下の会社と個人

② 主として卸売業を営む資本金1億円以下の会社とこれらを営む従業員数100人以下の会社と個人

③ 主としてサービス業を営む資本金5000万円以下の会社とこれらを営む従業員数100人以下の会社と個人

④ 主として小売業を営む資本金5000万円以下の会社とこれらを営む従業員数50人以下の会社と個人

⑤ 主としてゴム製品製造業(自動車等のタイヤ・チューブと工業用ベルトの製造業は除きます)を営む資本金3億円以下の会社とこれらを営む従業員数900人以下の会社と個人

⑥ 主としてソフトウェア業または情報処理サービス業を営む会社とこれらを営む従業員数300人以下の会社と個人

⑦ 主として旅館業を営む会社とこれらを営む従業員数200人以下の会社と個人

 

2.特定事業者がしてはならない行為

平成26年4月1日以降、特定事業者は、①減額、②買いたたき、③購入・利用強制、④税抜き価格による交渉拒否、⑤報復措置をしてはならないとされています。

平成26年3月31日以前の行為であっても、法律施行の日(平成25年10月1日)以後の行為であり、かつ、来年4月1日以降に供給を受ける商品または役務に関するものについては、同法の適用があります。

 

(1)減額

特定事業者は、商品若しくは役務の対価を減額して、特定供給事業者による消費税の転嫁を拒んではいけないとされています。

「対価」とは、消費税を含めた価格を意味します。

減額というのは、一旦決まった対価を減らすことなので、消費税率引き上げにより、価格を据え置くのではなく、さらに代金を削るという行為が対象になります。

この減額の例として、ガイドラインに挙げられているのは、以下のような行為になります。

① 消費税相当分を支払わないこと

② 支払時の対価の一部を差し引いて支払うこと

③ リベートや協力金など、名目の如何を問わず、対価の一部を徴収したり、一部を差し引いて支払うこと

なお、③については、「名目の如何を問わず」とはなっているものの、反対債権で相殺すること自体が一切認められないとは考えられませんが、リベートや協力金も、当初から約束している場合には、立派な反対債権となりますから、どのような債権なら相殺してもよいのかというのは問題になると思います。

また、前回問題提起をいたしました「消費税の転嫁」については、ガイドライン案では全く触れられておりません。これにより、公正取引委員会は、本体価格と消費税額について分けることなく、どのような形でも減らせば減額になると考えていることになるでしょう。

条文には記載されておりませんが、ガイドライン案では、「合理的な理由」があれば、減額も許されるようですが、ガイドライン案の「合理的な理由」の例は、以下の2つです。

① 商品に瑕疵があったり、納期の遅れなど、特定供給事業者の責任により、相当額の対価を減らす場合

② 数量リベート

ガイドライン案には記載されませんでしたが、下請法同様、相手方が同意しても、消費税の転嫁を拒むための減額は違法になるという運用になると思います。