2014.7月 の一覧

夏季休業のお知らせ

2014-07-31

当事務所は、平成26年8月13日から15日まで、夏季休業とさせていただきます。

よろしくお願いいたします。

親事業者の遵守事項⑥~下請代金の減額の禁止②

2014-07-14

(4)減額の正当化事由

それでは、減額が正当化されるのは、どのような場合なのでしょうか。テキストには、ほぼ唯一の正当化事由として、「ボリュームディスカウント」が挙げられています。このボリュームディスカウントとは、「親事業者が、下請事業者に対し、一定期間内に、一定数量を超えた発注をした場合に、下請事業者が親事業者に支払う割戻金」のことです。つまり、この割戻金分を下請代金から差し引いて支払っても、下請代金の減額にはならないことになります。

もっとも、当然のことですが、ボリュームディスカウントと銘打てば、減額が正当化されるというわけではなく、一定の要件があります。

まず、形式的には、

①ボリュームディスカウントの内容・条件について、書面で合意されていること

②その書面の記載と3条書面に記載されている下請代金の額とを併せて実際の下請代金の額とすることが合意されていること

③3条書面とその書面との関連づけがなされていること

が必要になります。

①と③は問題ないと思いますが、②は、何を言っているのか少々分かりづらいかも知れません。これは、ボリュームディスカウントの条件を満たした場合、3条書面に記載されている下請代金の額からそれを控除した金額を親事業者が支払うことになりますが、そのままだと減額になる(減額を疑われる)ことになるので、ボリュームディスカウントによる割戻金分が支払われなくとも、引かれた額を支払った金額に足した金額が、実際の下請代金の額となります、ということを書面で合意しておいて下さい、ということです。

合意しても減額は減額だ、という公正取引委員会の扱いとも矛盾するように思いますが、そこは目をつぶるのでしょうか。

また、実質的な条件ですが、割戻金を払っても、発注数量の増加により、下請事業者の得られる利益が実際に増加していることが求められます。

なので、以下のような場合は、ボリュームディスカウントには該当しないことになります。

①対象品目が特定されていない発注総額の増加のみを理由に割戻金を求めること。

②単に、将来の一定期間における発注数量を定め、発註数量の実績がそれを上回ることだけで割戻金を求めること。

発註数量の増加によって下請代金の額を調整したいのであれば、ボリュームディスカウントについては(もっといえば減額については)要件が厳しいので、数量に応じた単価をあらかじめ定めておく方がよいのではないかと思います。例えば、1万個までは1個あたり100円とするが、1万1個からは、1個あたり75円にする、といったやり方です。これであれば、対価を決める際の問題なので、買いたたきにならないように注意すればよいからです。

 

(5)実務上注意すべき「減額」

①改定単価の遡及適用

単価の改定自体は減額の問題ではありませんが(やり方次第で買いたたきの問題は生じますが)、低額改定した単価を、発註済でまだ支払いがきていない取引にまで遡って適用すると、その分について、下請代金の減額となります。

下請事業者との間の合意は減額を正当化しませんので、既発注で支払いがまだきていないものについても引き下げられた新単価を適用すると、仮にそのような取扱について下請事業者と合意していても下請代金の減額となります。

単価を引き下げた場合には、その単価の適用は、引き下げ後の発注分からという点に注意して下さい。

②振込手数料の控除

下請代金を下請事業者の銀行口座に振り込んで支払う場合、何も合意していないと、通常は、支払う側の(つまり債務者である)親事業者が振込手数料を負担することになります。

にもかかわらず、親事業者が勝手に振込手数料を控除すると、当然のことですが、その分下請代金の減額になります。

もっとも、これについては、事前に書面で合意している場合に限り、振込手数料の実費相当額を下請事業者の負担とすることが認められています。これも、合意によって減額でなくなる例といえるでしょう。

減額が認められるのは、実際の振込手数料の範囲内に限られますので、例えば、手数料相当額として、一律1000円を減額するという方法は認められません。

③手形払いに替えた現金払い

下請代金を手形で支払うことも認められていますが、これを下請事業者の要請によって現金払いに替えた場合、手形の額面相当額を現金で支払えば何の問題もありませんが、親事業者からすれば、手形期間満了時までに用意しておけばよかった現金を、下請代金の支払期日までに用意しなければならなくなります。

そこで、このような場合、親事業者の短期調達金利相当額を減額して支払うことが認められています(当然ですが、それ以上減額すると違法になります)。

たまに、契約上は手形払いになっているにも拘わらず、現金での支払いが常態化していることがあります。この場合、現金払いに契約が変更されていると考えられますので、仮に親事業者の短期調達金利相当額であっても、減額すると違法になります。

④端数の切り捨て

下請代金に一円未満の端数が生じた場合、支払の時点で円未満を切り捨てることは、減額には当たらないとされています。

もっとも、一円以上の単位で切り捨てると減額になるので注意が必要です。

 

親事業者の遵守事項⑥~下請代金の減額の禁止①

2014-07-03

(1)勧告対象のほとんどが「減額」

親事業者は、下請事業者に責任がないのに、下請代金の額を減額してはならないとされています。

これは、「下請代金の減額」といわれる違反行為です。

公正取引委員会が行う勧告(下請法7条)の対象になることが最も多いのが、この下請代金の減額です(ちなみに平成25年度に出された10件の勧告のうち、9件がこの下請代金の減額を対象とするものになります)。

勧告及び指導を含めた平成25年度の違反行為2250件の中でも、減額は228件と、支払遅延に次いで2番目に多いものとなっています。

参考:http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h26/jun/140604.files/260604.pdf

 

(2)「減額」とはどんな行為?

この違反行為を理解するポイントは

①「下請代金の減額」とは何か?

②「下請事業者に責任がある」とはどういうことか?

ということになります。

まず①ですが、「下請代金」については、下請法に定義が規定されており、「親事業者が製造委託等をした場合に下請事業者の給付(役務提供委託をした場合にあっては、役務の提供。)に対して支払うべき代金」(下請法2条10項)なので(ここには消費税・地方消費税相当額も含まれます)、この額を減らすと、「減額」になります。

下請代金の額は、発注段階で決定しているのが原則ですが、それを、発注後に決定どおり支払わないと、この減額が問題になるのです。この点、非常に判定の容易な行為といえるでしょう。

この減額ですが、親事業者が有無を言わさずに下請代金から差し引けば当然該当することになりますが、下請事業者が了解した上で下請代金から差し引いても、少なくとも公正取引委員会の見解では、違法な減額ということになるので注意が必要です。

また、過去の勧告事例等を見てみますと、実に様々な名目で減額が行われているようですが、名目の如何によって減額が正当化されることはありません。減額を回避しうる適当な名目はないかと頭を悩ませるのは、余り意味があることではありませんので、避けた方がよいと思います。

 

(3)下請事業者に責任がある場合とは?

減額も、下請事業者に責任があれば、違法ではありません。

もっとも、下請事業者に責任があると認められているのは、以下の場合だけです。

① 下請事業者に責任があるとして、「受領拒否」又は「返品」した場合に、その分を下請代金から減額するとき。

② 下請事業者に責任があるとして、「受領拒否」又は「返品」できるのに、そうしないで、親事業者自らが手直しし、手直しに要した費用を減額するとき。

③  瑕疵や納期の遅れによって商品価値の低下が明らかな場合、客観的に見て相当と認められる額を減額するとき。

①は、そもそも受け取っていないのですから、代金を支払う必要はなく、下請代金を減額した場合には該当しないと思います。

②は、手直し費用の算定が明確にできないと、手直し費用の名目で不当に多くの費用を減らしたということになります。その場合は減額とされるおそれがあるので、実務上それほど登場するものではないかと思います。

③も同様に、「客観的に見て相当と認められる額」を親事業者が判断して減額を行うのは、実際には勇気のいる行為ではないかと思います。

結局、下請事業者に責任があるといえる場合は、ほとんど想定しがたいと考えておいた方が安全だといえるでしょう。「3条書面に記載された金額は、きちんと払う。」という原則をきちんと守るということが、この減額の禁止の違反を防ぐということになります。