親事業者の遵守事項③~受領拒否
親事業者は、下請事業者に責任がないのに、下請事業者の給付の受領を拒んではならないとされています。
これは、「受領拒否」といわれる違反行為ですが、この違反行為のポイントは
①「受領」を「拒む」とは何か?
②「下請事業者に責任がある」とはどういうことか?
になります。
①の「受領」ですが、これは、親事業者が納入物を事実上の支配下に置くこととされています。親事業者が受け取れば当然受領ですが、親事業者が指定した先が受け取っても、受領になります。有体物が前提となっているので、役務提供委託には適用されません。
この「受領」を「拒む」と、「受領拒否」ということになります。
下請事業者が持ってきたものを受け取らないというのが典型ですが、発注の取り消しや納期の延期なども、既にものが完成しており、受領しようと思えばできる状態にあるのであれば、受領拒否に該当します。
②の下請事業者に責任がある場合ですが、これについては、以下の場合に限り、認められることになります。
ア 下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なる場合(注文違い)
イ 下請事業者の給付に瑕疵のある場合(瑕疵)
ウ 下請事業者の給付が3条書面に明記された納期に行われない場合(納期遅れ等)
受領を拒むという実行行為については、それほど問題ないと思いますから、もし、受領を拒む場合には、その理由が何であるかを検討していただければ、受領拒否の違反になるか否かがすぐに分かることになります。
すなわち、その理由が、上記のア~ウであれば大丈夫、それ以外の理由であれば、違反、ということになります。
※最近、返品と受領拒否の違いについて質問を受け、気づいたことですが、上記のア及びイの理由は、受領後に判明することが通常でしょうから、アとイを理由とする受領拒否は、既に親事業者が目的物を支配下に置いた(受領した)後で判明することなので、事実上、ほとんどあり得ないのではないかと思います。あるとすれば、納品物を見た瞬間に瑕疵等が判明したので受け取らない、というような場合に限られるでしょう。