親事業者の遵守事項①
下請法上、親事業者には、11項目の遵守事項が課されています。これらは、下請法の4条に規定されているのですが、4条は1項と2項に分かれています。
一応条文の概要を示してみましょう。
(親事業者の遵守事項)
第四条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一~七(略)
2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
一~四(略)
1項と2項で何が違うのかといえば、2項には、「下請事業者の利益を不当に害してはならない」という要件が付け加わっているという点です。
つまり、条文に書かれた行為をすると違法というのが1項、条文に書かれた行為をして、下請事業者の利益を不当に害すると違法になるのが2項、ということになります。
ただ、実際には、4条2項の遵守事項のうち、「下請事業者の利益を不当に害したかどうか」という要件が意味を持っていると考えられるのは、「不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止」(4条2項4号)くらいではないかと思います。
なお、公正取引委員会のテキスト(以下「テキスト」といいます。)によると、遵守事項については、下請事業者の了解を得ていても、また、親事業者に違法の意識がなくても、規程に抵触すれば違法になるとなっています。
後者、すなわち、「悪いことだとは思わなかった」というのが通用しないのは、ある意味当然のことだと思いますが、前者については、個人的にはどうかと思うところです。一般論として、下請事業者に対する保護は必要だとしても、下請事業者も事業者ですから、それが任意に了承したことについてまで、法に違反するとするのは、ある意味、お節介ではないかと思うからです。
ともあれ、運用する側が、下請事業者の承諾を免責事由とはしていないということは、心しておく必要があるでしょう。