年末年始の営業について

2015-12-22

年内の営業は、12月28日まで、新年の営業は、1月4日からとなります。

今年も残り少なくなりましたが、皆様、どうか、よいお年をお迎え下さい。

コンビニのオーナーは労働者か?

2015-08-28

少々前になりますが、本年4月16日、東京都労働委員会で、大手コンビニエンスストア・ファミリーマートの加盟者は労働組合法上の労働者に当たるとの判断が下されました(以下「命令」といいます)。昨年3月20日にも、やはり大手コンビニエンスストアのセブン-イレブン・ジャパンの加盟店主らについて、岡山県労働委員会で同様の判断がなされておりますので、はじめてそのような判断がなされたというわけではありませんが、コンビニのオーナーは労働者なのか?ということが改めて議論されることになりました。

東京都労働委員会(都労委)の開示するところによりますと、命令で、都労委が加盟者について労働組合法上の労働者に該当するとした理由は、以下のとおりです(表現は多少変更しております)。

  • フランチャイズ契約であっても、その実態においてフランチャイジーがフランチャイザーに対して労務を提供していると評価できる場合もあり得るのであるから、フランチャイズ契約との形式であることのみをもって、労働組合法上の労働者に該当する余地がないとすることはできない。
  • 本件における加盟者の就労等の実態を鑑みると、加盟者は、本部に対して労務を提供していたといえる。
  • そして、本件における加盟者が労働組合法上の労働者に当たるか否かは、以下の①~⑥を総合的に考慮して判断すべきである。

①事業組織への組入れ

②契約内容の一方的・定型的決定

③報酬の労務対価性

④業務の依頼に応ずべき関係

⑤広い意味での指揮監督下の労務提供及び一定の時間的場所的拘束

⑥顕著な事業者性等の諸事情があるか否か

  • ①本部が運営するファミリーマート・システムは、加盟者の労務提供なしには機能せず、加盟者が、本部の業務遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に組み入れられている。
  • ②加盟者は、ファミリーマート店が全国的にどこでも同一のシステムと統一的なイメージで経営・運営されるべきであるという要請により、定型的な契約を余儀なくされている。
  • ③加盟者の得る金員は、労務提供に対する対価又はそれに類する収入としての性格を有するものといえる。
  • ④本部からの指示、指導や助言、推奨に従わない場合に再契約を拒否される不安等から、加盟者は、本部の個々の業務の依頼に応じざるを得ない状況にある。
  • ⑤加盟者は、広い意味で、本部の指揮監督の下に労務を提供していると解することができ、その労務提供に当たっては、時間や場所について一定の拘束を受けているということができる。
  • ⑥加盟者には、自らの独立した経営判断に基づいてその業務内容を差配して収益管理を行う機会が実態として確保されているとは認め難く、実態として顕著な事業者性を備えているとはいえない。
  • これらの諸事情を総合的に勘案すれば、本件における加盟者は、本部との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。

 

労働組合法上、労働者とは、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これの準ずる収入によって生活する者」と定義されています(同法3条)。

労働者については、労働基準法や労働契約法でも定義されておりますが、労組法上の労働者の特色は、労働組合を結成した上で、団体交渉を行うことを認めるべきかどうか、という観点から判断されるものであり、必ずしも労働契約を締結した者に限らない、とされています(菅野「労働法」p590~591)。

つまり、労基法上の労働者とはいえなくても、労組法上の労働者といえることはあり得る、ということになるのです。

このため、労働契約以外の契約により労務の提供を行う者が、労組法上の労働者に該当することを肯定する判断がなされることは珍しくなく、特に、最近の最高裁判例では、その傾向が強いように思います(新国立劇場運営財団事件(最判平成23年4月12日)、INAXメンテナンス事件(最判平成23年4月12日)、ビクター事件(最判平成24年2月21日))。

上記の都労委によって採用されている①~⑥の要件については、基本的に上記の最高裁判例によっても採用されているものとなります。

その点で、都労委がこの①~⑥の要件によって、コンビニのオーナーが労組法上の労働者に該当するかどうかを判断したことは、当然のことといえるでしょう。

ただ、その当てはめが適切かどうかは、②を除き(フランチャイズ契約ですから、契約内容が、一方的かつ定型的に決められているというのは、ある意味その通りなので)、個人的には疑問がないわけではありません。

まず①ですが、これは、本部の事業に必要な労働力として組織に組み入れられているといえるかということですが、加盟者に対する本部の事業とは、加盟者の行うコンビニエンスストア事業に対する指導・援助になるはずです。とすると、指導・援助される側の加盟者の事業が本部の事業に組み入れられているというのは、あり得ないように思います。

この点、命令は、「ファミリーマート・システムは、加盟者の労務提供なしには機能せず」としておりますが、「フランチャイズ・システム」とは、「あるフランチャイザーが多数のフランチャイジーにフランチャイズを付与することにより、それらの個々の要素が総合され、全体として一つのまとまりをもち、独自の流通組織として機能する仕組をいう。」(川越憲治「フランチャイズシステムの法理論」p30)とされており、フランチャイザーの事業そのものではありません。

命令は、この点を混同しているように思います。

③は、労組法における労働者の定義からすると、最も重要な部分になると思われますが、なぜ、労務の対価といえるのかについては理由が書いてないのでよく分かりません。ただ、加盟者が得るのは、自らの事業から得られる利益であることからすれば、労務の対価でないことは明らかでしょう。

確かに、大手コンビニエンスストアの採用する粗利分配方式とオープン・アカウント制度では、加盟者は日々の売上金を一旦本部に送金し、そこから諸費用を控除の上、契約で加盟者が受け取ることになっている割合の粗利益を得ることになりますが、だからとって、加盟者はこの金員を自らの労務の対価として受け取っているわけではありません。

このことは、どんなに長時間働いても、売上が上がらなければ、受け取る金額は減りますし、全ての作業を加盟者自ら行わなくても(アルバイトに任せても)、売上が上がれば受け取る金額が増えることからも明らかだと思います。

なぜこのような認定になったのかは分かりませんが、ひょっとすると、大手のコンビニエンスストアで採用されている最低保証制度(加盟者に対して一定の総収入を保証する制度)があることによって、必ずしも売上(利益)だけで加盟者の受け取る金銭が決まっていないことから、労務に対価に近いものだと認定されたのかも知れません(この制度は加盟者の経営の安定を図るためのものであり、労務の対価を認定する根拠になるとは考えにくいですが・・・)。

いずれにしても、オープン・アカウントをやめると、加盟者は本部から受け取る金銭がなくなりますが、そのとたんに労働者ではなくなるというのも奇妙なものといわざるを得ないでしょう。

④も、本部が色々と指示するのは、加盟者のコンビニエンスストア事業のためであって、何も、本部の行う事業をさせようとしているわけではないので(実際にも、加盟者は本部の事業をしていないと思います)、おかしな認定だといわざるを得ないように思います。

繰り返しになりますが、本部から加盟者になされる「指示、指導や助言、推奨」は加盟者の事業に対してなされるものであり、それによって再契約を拒否されるかどうか不安に思うことはあるかも知れませんが、だからといって加盟者が本部の業務を行わざるを得ないということには全くなりません。

⑤についても、このような認定に至った理由が分かりませんが、「加盟者は、広い意味で、会社の指揮監督の下に労務を提供していると解することができ」という部分は、フランチャイズ契約に従って、事業を行っているということを、広く解釈すると、そのようにいうことも出来る、ということであれば、そう言えなくもないでしょう。ただ、どう解釈しても、フランチャイザーに労務を提供していると解することはできないように思います。

「その労務提供に当たっては、時間や場所について一定の拘束を受けているということができる」という部分も、フランチャイズ契約に従って事業をしなければならないという範囲では、その通りと言えなくもありませんが、やはり、労務を提供しているということにはならないと思います。

最後の⑥ですが、「加盟者には、自らの独立した経営判断に基づいてその業務内容を差配して収益管理を行う機会が実態として確保されているとは認め難く、実態として顕著な事業者性を備えているとはいえない」というのは、通常の事業に比べて、拘束される度合いが大きいという点では、確かにそうでしょうが、その機会さえ確保されていないということは、いくら何でも言い過ぎのように思います。

命令は、加盟者の店舗の収益管理は全て本部が行っており、一切加盟者には関係ないといいたいのでしょうか。

今後、この認定が維持されるのかどうかは分かりませんが、コンビニの三点セット(粗利分配方式、オープン・アカウント、最低保証制度)がこの認定を導いたのだとすれば、少々皮肉なことのように思います。

加盟者の保護を考えるということは意義のあることだと思いますが、それを労働法制の中で考えようとした今回の命令は、やはり無理があるのではないでしょうか。

少なくとも個人的には、そう思います。

 

夏季休業のお知らせ

2015-08-03

平成27年8月12日から14日まで、当事務所は夏季休業とさせていただきます。

よろしくお願いいたします。

平成27年度下請取引適正化推進セミナー・基礎コースのご案内

2015-04-09

下記の日程で、下請取引適正化推進セミナー((財)全国中小企業取引振興協会主催)の講師を担当させていただくこととなりました。

今回のセミナーは、初心者向けの基礎コースで、下請法を基礎から学びたい、あるいは学びなおしたいという方向けのものになります。

受講料は1名に付き12,400円(テキスト代・消費税込み)です。

関心のある方は、是非ご参加いただければと思います。

詳しくは、主催者のホームページ(http://zenkyo.or.jp/seminar/orijinal_jitumu.htm)をご覧下さい。

日時:平成27年5月27日(水) 13:00~16:00

場所:国立オリンピック記念青少年総合センターセンター棟(東京都渋谷区代々木神園町3-1)

 

 

親事業者の遵守事項⑪~不当な経済上の利益の提供要請の禁止

2015-03-18

親事業者は、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を下請事業者に提供させて、下請事業者の利益を不当に害してはならないとされています。

これは、「不当な経済上の利益の提供要請」といわれる違反行為です。

平成25年度に1件、平成24年度には5件、公正取引委員会が行う勧告(下請法7条)の対象になっています。

禁止事項で最も多く勧告の対象となる減額については、下請法違反行為であるということが周知されたため、「なら、下請代金は支払った上で、別途金銭を支払わせればよいのではないか」と考える親事業者が増えたかどうかは分かりませんが(実際平成15年の下請法改正前は違反行為ではありませんでした)、当然のごとく、別途支払わせれば問題にならないということはなく、この「不当な経済上の利益の提供要請」が問題となります。

この禁止行為のポイントは、

①「自己のために」とはどういうことか?

②「経済上の利益」とは何か?

③「提供させる」とは?

④「下請事業者の利益を不当に害する」とはどういうことか?

ということになります。

まず①ですが、これは、すなわち親事業者の利益のために提供させる場合が、違反行為の要件ということです。ほとんど問題にならない要件だとは思いますが、直接的な利益のみならず、間接的に利益になる場合も含まれると解されておりますので、子会社に提供させるような場合も「自己のために」に該当することになります。

②は、金銭・役務が代表的例であるものの、それ以外にも経済上の利益といえれば一切のものが含まれる(物の保管なども含まれます)ということを意味します。もっとも、実務上は金銭や従業員の派遣などがほとんどで、それ以外のものはあまりないように思います。

③は、任意に提供される場合が除かれるということを意味しますが、購入利用強制の「強制」と同様、事実上、下請事業者に提供を余儀なくさせているか否かで判断されることになると思われます。なので、やはり下請取引に影響を及ぼすこととなる者が経済上の利益の提供を要請することは避けるべきでしょう。

最後の④ですが、4条2項の禁止事項のため、この要件も問題になります。

これは、テキストによると、

・下請事業者が、「経済上の利益」を提供することが製造委託等を受けた物品等の販売の促進につながるなど、提供しない場合に比べて直接の利益になるものとして、自由な意思により提供する場合には、「下請事業者の利益を不当に害する」ものではない。

一方で、

・下請事業者が「経済上の利益」を提供することが、下請事業者にとって直接の利益となることを親事業者が明確にしないで提供させる場合には、「下請事業者の利益を不当に害する」ものとして問題になる。

となっています。

前者の場合は、当然問題にならないといえるでしょう。利益が出ているのですから、ここでは「自由な意思により」という部分は不要ではないかと思います。

問題は後者です。単に、「下請事業者にとって直接の利益とならないのに提供させる」ではなく、「下請事業者にとって直接の利益となることを明確にしないで提供させる」となっているからです。

ガイドラインでは、この点もう少し詳しく、「親事業者と下請事業者との間で、負担額及びその算出根拠、使途、提供の条件等について明確になっていない「経済上の利益」の提供等下請事業者の利益との関係が明らかでない場合」には、下請事業者の利益を不当に害するとされています。

つまり、結果として、下請事業者にも相応の利益(極端に言えば、払った金額を上回る利益)があっただけでは、下請事業者の利益を不当に害さなかったとはいえない、と解されます。

逆に、下請事業者に対して、「負担額及びその算出根拠、使途、提供の条件等」を明確にして経済上の利益を提供させたところ、当初の予定ほど下請事業者の利益にはならなかった場合については触れられておりません。

これについては、親事業者が設定した「負担額及びその算出根拠、使途、提供の条件等」がそれなりに合理的であれば、任意に提供した下請事業者の自己責任とする(従って親事業者は違反を問われない)のか、外れた以上、合理的ではなかったというべきであり、下請事業者からすればだまされたということになるから違反行為となる、とするのかのいずれかになるかと思います。

私見ですが、下請事業者の利益を不当に害したかどうかの問題である以上、当初の予定どおりに行かなかった場合は、下請事業者の利益を不当に害したと考えるべきだと思います。

上記のとおりですので、下請事業者に提供させた経済上の利益以上の見返りをあたえられない場合は、何の提供も求めない、というのが実務上とるべき対応ということになるといわざるを得ません。

 

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