消費税の転嫁対策に関する特別措置法案の公表④
※ 平成25年6月5日、消費税の転嫁対策に関する特別措置法が成立いたしました。若干間抜けになってしまいましたが、とりあえず続けます・・・
4.総額表示義務に関する消費税法の特例
消費税の納税義務のある事業者が消費者に対して、価格を表示する場合には、物やサービスの価格に消費税額を加えた価格を表示しなければならないとされています(消費税法63条)。
これに対し、今回の法律では、表示価格が税込価格であると誤認されないような措置を講じていれば、税抜価格を表示してもよいとされました。
これは、今回の消費税率の引き上げが2段階となることから、該当する事業者に総額表示の義務を負わせるのが酷であると考えられたためです。
もっとも、本則は総額表示なので、税込価格を表記しない事業者は、できる限り速やかに税込価格を表示するよう努めなければならないとされています。
なお、税込価格を表示する場合に、消費税の円滑かつ適正な転嫁のために必要があるときは、税込価格に併せて税抜価格または消費税の額を表示するものとされました。
税込価格の表示が定着し、消費税込みであるか否かを示さない価格表示をしている事業者は、ほとんど税込価格を表示しているといえるため、税抜き価格を表示することは、消費税込みの価格と誤認されるおそれがあり、場合によっては不当表示になるおそれもあります(http://www.caa.go.jp/representation/keihyo/qa/hyoujiqa.html#Q18)。
しかしながら、税込価格が明瞭に表示されていれば、仮に税抜価格を強調するような表示を行っても不当表示には該当しないとされました。もっとも、税込表示が明瞭に記載されているということは、消費者が税抜価格を税込価格と誤認するとは考えられないと思いますから、当然のことのように思います。
5.転嫁及び表示カルテルの適用除外
消費税の転嫁を円滑かつ適正に実行するため、転嫁カルテルと表示カルテルについて、一定の要件の下、独占禁止法の適用を除外することとされました。
転嫁カルテルとは、消費税の転嫁の方法について、複数事業者が共同して、そのやり方を決めることです。典型的には、事業者が本体価格に消費税を上乗せした価格で取引をすることを、参加した全事業者で実施することになります。取引先との力関係から、個別に交渉した場合は消費税の転嫁を行えない場合であっても、複数の事業者が共同でそのような申し入れをすれば、転嫁を認められやすくなるであろうということからこのようなカルテルが認められることになったのです。端数を切り下げるのか切り上げるのかなどについて共同で行うこともここに含まれます。
なお、当然のことですが、転嫁の方法とは関係のない本体価格を統一する決定は適用除外の対象外となります。
この転嫁カルテルが認められる要件は、
① 共同行為に参加する事業者の3分の2以上が中小事業者であること
② 不公正な取引方法を用いるものではないこと
③ 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにするものではないこと
④ 一定の取引分野における競争を実質的に制限することによって不当に対価を維持したり、引き上げたりするものでないこと
⑤ 公正取引委員会へ届け出ること
です。
表示カルテルとは、消費税についての表示の方法をどのようにするかについて、複数事業者が共同して決めることです。
例えば、税率引き上げ後の価格の表示について、以下のような統一的な方法を用いるようにすることです。
・「税込価格」と「消費税額」を並べて表示する。
・「税込価格」と「税抜価格」を並べて表示する。
この表示カルテルが認められる要件は、上記の②~⑤になります。