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平成27年度下請取引適正化推進セミナー「事例研究コース」開催のお知らせ

2015-12-22

下記の日程で、下請取引適正化推進セミナー((財)全国中小企業取引振興協会主催)の講師を担当させていただくこととなりました。

今回のセミナーは、過去の違反事例や協会に寄せられた質問等を題材とした実践的なものを予定しております。

受講料は1名に付き12,400円(テキスト代・消費税込み)です。

関心のある方は、是非ご参加いただければと思います。

詳しくは、主催者のホームページをご覧下さい。

http://www.zenkyo.or.jp/whatsnew/archives/2015/12/post-99.htm

※ 申込の開始は、来年1月下旬頃の予定です。

日時:平成28年2月29日(月) 13:00~16:00

場所:国立オリンピック記念青少年総合センターセンター棟(東京都渋谷区代々木神園町3-1)

 

平成27年度下請取引適正化推進セミナー・基礎コースのご案内

2015-04-09

下記の日程で、下請取引適正化推進セミナー((財)全国中小企業取引振興協会主催)の講師を担当させていただくこととなりました。

今回のセミナーは、初心者向けの基礎コースで、下請法を基礎から学びたい、あるいは学びなおしたいという方向けのものになります。

受講料は1名に付き12,400円(テキスト代・消費税込み)です。

関心のある方は、是非ご参加いただければと思います。

詳しくは、主催者のホームページ(http://zenkyo.or.jp/seminar/orijinal_jitumu.htm)をご覧下さい。

日時:平成27年5月27日(水) 13:00~16:00

場所:国立オリンピック記念青少年総合センターセンター棟(東京都渋谷区代々木神園町3-1)

 

 

親事業者の遵守事項⑪~不当な経済上の利益の提供要請の禁止

2015-03-18

親事業者は、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を下請事業者に提供させて、下請事業者の利益を不当に害してはならないとされています。

これは、「不当な経済上の利益の提供要請」といわれる違反行為です。

平成25年度に1件、平成24年度には5件、公正取引委員会が行う勧告(下請法7条)の対象になっています。

禁止事項で最も多く勧告の対象となる減額については、下請法違反行為であるということが周知されたため、「なら、下請代金は支払った上で、別途金銭を支払わせればよいのではないか」と考える親事業者が増えたかどうかは分かりませんが(実際平成15年の下請法改正前は違反行為ではありませんでした)、当然のごとく、別途支払わせれば問題にならないということはなく、この「不当な経済上の利益の提供要請」が問題となります。

この禁止行為のポイントは、

①「自己のために」とはどういうことか?

②「経済上の利益」とは何か?

③「提供させる」とは?

④「下請事業者の利益を不当に害する」とはどういうことか?

ということになります。

まず①ですが、これは、すなわち親事業者の利益のために提供させる場合が、違反行為の要件ということです。ほとんど問題にならない要件だとは思いますが、直接的な利益のみならず、間接的に利益になる場合も含まれると解されておりますので、子会社に提供させるような場合も「自己のために」に該当することになります。

②は、金銭・役務が代表的例であるものの、それ以外にも経済上の利益といえれば一切のものが含まれる(物の保管なども含まれます)ということを意味します。もっとも、実務上は金銭や従業員の派遣などがほとんどで、それ以外のものはあまりないように思います。

③は、任意に提供される場合が除かれるということを意味しますが、購入利用強制の「強制」と同様、事実上、下請事業者に提供を余儀なくさせているか否かで判断されることになると思われます。なので、やはり下請取引に影響を及ぼすこととなる者が経済上の利益の提供を要請することは避けるべきでしょう。

最後の④ですが、4条2項の禁止事項のため、この要件も問題になります。

これは、テキストによると、

・下請事業者が、「経済上の利益」を提供することが製造委託等を受けた物品等の販売の促進につながるなど、提供しない場合に比べて直接の利益になるものとして、自由な意思により提供する場合には、「下請事業者の利益を不当に害する」ものではない。

一方で、

・下請事業者が「経済上の利益」を提供することが、下請事業者にとって直接の利益となることを親事業者が明確にしないで提供させる場合には、「下請事業者の利益を不当に害する」ものとして問題になる。

となっています。

前者の場合は、当然問題にならないといえるでしょう。利益が出ているのですから、ここでは「自由な意思により」という部分は不要ではないかと思います。

問題は後者です。単に、「下請事業者にとって直接の利益とならないのに提供させる」ではなく、「下請事業者にとって直接の利益となることを明確にしないで提供させる」となっているからです。

ガイドラインでは、この点もう少し詳しく、「親事業者と下請事業者との間で、負担額及びその算出根拠、使途、提供の条件等について明確になっていない「経済上の利益」の提供等下請事業者の利益との関係が明らかでない場合」には、下請事業者の利益を不当に害するとされています。

つまり、結果として、下請事業者にも相応の利益(極端に言えば、払った金額を上回る利益)があっただけでは、下請事業者の利益を不当に害さなかったとはいえない、と解されます。

逆に、下請事業者に対して、「負担額及びその算出根拠、使途、提供の条件等」を明確にして経済上の利益を提供させたところ、当初の予定ほど下請事業者の利益にはならなかった場合については触れられておりません。

これについては、親事業者が設定した「負担額及びその算出根拠、使途、提供の条件等」がそれなりに合理的であれば、任意に提供した下請事業者の自己責任とする(従って親事業者は違反を問われない)のか、外れた以上、合理的ではなかったというべきであり、下請事業者からすればだまされたということになるから違反行為となる、とするのかのいずれかになるかと思います。

私見ですが、下請事業者の利益を不当に害したかどうかの問題である以上、当初の予定どおりに行かなかった場合は、下請事業者の利益を不当に害したと考えるべきだと思います。

上記のとおりですので、下請事業者に提供させた経済上の利益以上の見返りをあたえられない場合は、何の提供も求めない、というのが実務上とるべき対応ということになるといわざるを得ません。

 

親事業者の遵守事項⑩~購入・利用強制の禁止

2015-02-10

親事業者は、正当な理由が無いのに、下請事業者に、親事業者の指定する物を強制的に購入させたり、サービスを強制的に利用させたりしてはならないとされています。

これは、「購入・利用強制」といわれる違反行為です。

この違反行為を理解するポイントは

①「正当な理由」とは何か?

②「下請事業者に強制的に購入・利用させる」とはどういうことか?

ということになります。

まず①ですが、この「正当な理由」については、条文に例が記載されております。それによると、「下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合」には、正当な理由があるということになります。

これから類推すると、親事業者の注文した物が、特定の材料を使う必要があったり、特定の機械を使わないと作るのが難しいような場合が、この「正当な理由」になるといえるでしょう。

正当な理由があれば、購入・利用を強制しても問題ないということになりますが、正当な理由が、上記のようなものであるなら、そもそも、購入・利用を強制したとして問題になることはないように思われます。

実務上は、もっぱらこの正当な理由のない場合が問題になります。正当な理由のない場合、強制的に購入・利用させると、この違反行為に該当することになるからです。

そこで、②の「強制的に」とは、どのような場合かが問題となります。

購入・利用を取引の条件とするような場合や購入・利用しないと不利益を与えるような場合は当然強制的にということになると思いますが、親事業者が購入・利用を単に依頼したような場合でも、常にそれが「強制的」でないとはいえません。親事業者からすれば、買いたければ買って下さいという程度で依頼したとしても、下請事業者からすると、拒否し難い場合もあるからです。

そこでテキストでは、「事実上、下請事業者に購入等を余儀なくさせていると認められるか否か」を判断基準とするとしています。

なお、ガイドラインでは、購入・利用強制に該当するおそれがある場合として、以下のような例を挙げています。

ア 購買・外注担当者等下請取引に影響を及ぼすこととなる者が下請事業者に購入又は利用を要請すること。

イ 下請事業者ごとに目標額又は目標量を定めて購入又は利用を要請すること。

ウ 下請事業者に対して、購入又は利用しなければ不利益な取扱いをする旨示唆して購入又は利用を要請すること。

エ 下請事業者が購入もしくは利用する意思がないと表明したにかかわらず、又はその表明がなくとも明らかに購入もしくは利用する意思がないと認められるにもかかわらず、重ねて購入又は利用を要請すること。

オ 下請事業者から購入する旨の申し出がないのに、一方的に物を下請事業者に送付すること。

上記のうち、ウが駄目なのは明らかだと思います。エやオも下請事業者の意向を全く無視しているといえそうなので、やはり強制といえるでしょう。

イは場合によりけりのような気もしますが、目標額や目標量が定められているということは、無言の圧力ともいえますので、やはり避けるべきと思います。

少し行き過ぎと思えるのはアでしょうか。取引に影響を及ぼしうるという立場を利用して購入・利用を求めるということは強制といって差し支えないと思いますが、そうでない場合も当然ありうるからです。

ただ、強制するつもりがないのであれば、敢えて取引に影響を及ぼしうる立場の人から要請する必要もないと思います。

にもかかわらず、そのような人が要請するというのは、買わせようと強制していると疑われても仕方がないといえるでしょう。

李下に冠を正さず、といいますので、やはり、そのような立場の方は、要請を控えるべきです。

なお、購入・利用強制につきましては、平成20年4月17日に勧告が出されております。

公正取引委員会の報道発表資料によりますと、以下のような内容の事件です。

「K社は、業として請け負う貨物運送の全部又は一部を下請事業者に委託しているところ、自社の利益を確保するため、平成18年9月から同19年9月までの間、ラーメン等の物品販売キャンペーンにおいて、役員及び従業員の知人のほか取引先に購入を要請するという方針のもと、あらかじめ、本社各部、支店、営業所等の部門ごとに、販売目標数量を定め、下請事業者に対し、下請事業者との取引に係る交渉等を行っている支店、営業所等の長又は配車担当者を通じて、具体的な数量を示し、販売目標数量に達していない場合には既に購入した者に対し再度要請するなどして、購入要請を行っていた。・・・下請事業者(241名)は、今後のK社との取引を考えやむを得ず、前記要請を受け入れて、ラーメン等の物品を購入した(購入総額2469万1440円)。」

上記の例からすると、アとイ(場合によってはエ)が合わさった事例ですが、では、K社とすれば、どうすればよかったのかを考えてみるのもよいかも知れません。

 

親事業者の遵守事項⑨~有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

2015-02-05

親事業者は、下請事業者に有償支給材(半製品、部品、附属品又は原材料)を支給している場合に、下請事業者に責任がないにもかかわらず、その有償支給材を用いた納品物に対する下請代金の支払期日よりも先に、有償支給材の代金を回収して、下請事業者の利益を不当に害してはならないとされています。

これは、「有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止」といわれる違反行為です。

親事業者が下請事業者に対して有償支給材を支給することがあると思いますが、その際、親事業者は、当然下請事業者からその代金を回収することになります。

通常の取引であれば、代金の回収時期は、お互いが合意しさえすれば、いつでもよいことになりますが、下請取引の場合、それ自由にしてしまうと、親事業者が有償支給材の代金を直ちに回収することが可能となり、結果として、それで作った給付物の代金を受け取る前に有償支給材の代金の支払いを強制され、下請事業者の資金繰りが苦しくなるおそれがあります。

そのような行為を防ぐのが、この禁止事項の目的となります。

この違反行為のポイントは

①「親事業者の支給する有償支給材」であること

②「有償支給材の代金を先に回収する(支払わせる又は控除する)」とは?

③「下請事業者に責任がある」とはどういうことか?

④「下請事業者の利益を不当に害する」とは?

ということになります。

まず①ですが、条文をみると、「自己(親事業者)に対する給付に必要な原材料等を自己(親事業者)から購入させた場合」となっているので、対象となる有償支給材は、親事業者が売った物に限られるということになります。

なので、親事業者の子会社等が販売するのであれば、この規制の対象にはなりません(ただし、「購入・利用強制」の問題にはなり得ます)。

②ですが、条文を正確に引用すると、「・・・支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部もしくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部もしくは一部を支払わせること」となっておりますので、「控除」と「支払わせる」ということを意味します。「支払わせる」の方は問題ないと思いますが、「控除」とは、テキストによると、「下請代金から原材料等の対価の全部又は一部を差し引く事実上の行為をいい、その結果、支払期日に下請代金を全く支払わないことも含む」とされています。

実際上は、相殺されることが多いと思いますが、民法上の相殺が成立したか否かとは関係がないため、控除という一般的な用語を用いたようです。

下請代金の支払いより先に、有償支給材の代金を支払わせたり、控除したりすると、違反となりますから、少なくとも、下請代金の支払いと同時以降に、有償支給材の代金を回収する必要があります。

実務上は、以下のいずれかの方法になると思います。

ア 下請事業者の給付に対する代金の支払期日に、実際に使用された原材料等の対価を控除して下請代金を支払う。

イ 有償支給材が全部使われる期間を過ぎてから、全額を下請代金から控除して支払う。

アの場合、全部の原材料等が使われていれば、イと同じになりますが、一部しか原材料等が使われない場合には、その代金分だけ回収することになります。

イの場合、原材料等がどのくらい使われたかどうかをいちいち確認しなくてよいことにはなりますが、その分原材料等の対価の回収が遅れることになります。

③の「下請事業者に責任のある場合」については、テキストでは、以下のような場合が該当するとしております。

ア 支給された原材料等を下請事業者が破損又は滅失したため、それを用いて親事業者に納入すべき物品の製造が不可能となった場合

イ 支給された原材料等によって不良品や注文外の物品を製造した場合

ウ 支給された原材料等を他に転売した場合

なお、これは他の違反行為とは違って、例示ですので、これ以外にも該当する場合があると考えられます。

問題は、下請事業者に責任がないにもかかわらず、原材料等が滅失してしまった場合の処理です。

例えば、東日本大震災による津波で下請事業者の工場が被害を受け、全て原材料等が流されてしまったような場合が該当すると思います。

この場合、通常下請事業者に責任はないことになりますから、結局親事業者としては、原材料等の代金を回収できないと考えざるを得ないでしょう。

最後に④ですが、テキスト等では、どのような場合であれば「下請事業者の利益を不当に害する」ことになるのかについて、何ら触れられておりません。

これについては、平成23年の勧告事案が参考になります。

http://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukekankoku/sitaukekankoku23.files/11122102.pdf

この事件は、早期決済の禁止が勧告の対象となったあまりないケースですが、資料の中に、「下請事業者の不利益」に触れた部分があります。

これによると、「下請事業者の不利益」は

 

【有償支給原材料等の対価の早期決済と 下請事業者の不利益について】

・S社(勧告を受けた親事業者)が下請事業者に包装材料を有償支給し、当該包装材料を使用した商品に係る下請代金の支払より前に、当該包装材料の対価の決済を行う。【有償支給原材料等の対価の早期決済】

・包装材料の対価の決済後、販売不振等によりS社の自社ブランド商品の製造委託が終了。

・包装材料の使用取りやめに伴い、包装材料が不要となる(残包材の発生)。

・残包材を用いた商品の納入の機会がなくなるため 、下請事業者は残包材を用いた商品の下請代金の支払を受けられず、残包材の対価相当額が下請事業者の不利益として残る。

 

ということになります。

すなわち、支給された材料の代金は払ったものの、それを用いる製品を親事業者であるS社が製造中止としたため、材料だけが下請事業者の元に残された、これが「下請事業者の不利益」だ、というのです。

もしそうだとすると、「早期決済をしても、最終的に下請代金を支払えば、下請事業者に不利益はない」ということになります。

そう言い切ってよいかどうかは、何ともいえませんが、少なくとも本件では、S社が下請事業者から包装材料を買い戻しておけば、早期決済の部分は勧告の対象とはされなかったように思います。

 

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