2012.4月 の一覧

FC法務研究会のお知らせ

2012-04-13

平成24年5月16日午後2時から、株式会社アクアネット(http://aqnet.co.jp/)主催のFC法務研究会で講師を務めます。

競業避止義務など、本部のノウハウの保護についてお話しさせていただく予定です。

有料のセミナーになりますが、関心のある方は是非ご参加下さい。

http://aqnet.co.jp/blog/archives/1457

下請法と優越的地位の濫用について②

2012-04-13

下請法違反の行為が優越的地位の濫用にもなるかどうかについてまず検討すべきは、下請法上の親事業者は、直ちに下請事業者に対して優越的な地位にあるといえるかどうか、ということになります。

親事業者と下請事業者は、①両者の資本金の額、及び②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託)によって、形式的に決まることになる一方、「甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても、乙がこれを受け入れざるを得ない場合」と、実質的に判断されるで、判断の枠組みが大きく異なります。

もちろん両者は重なる部分も多いと思いますが、重ならない場合も十分あり得ると考えられますので、親事業者が優越的な地位にはない場合には、勧告に従わなくとも、独占禁止法の違反として排除措置命令の対象とはならないことになります(そのような場合に勧告に従わないことを勧めるわけではありません、念のため)。

親事業者が優越的な地位にあるとした場合、今度は任意に代金の減額に同意したことをどのように評価するのかが問題になります(優越的な地位にある者からの要請なので同意してもそれが任意にしたとはいえないのではないか、という問題はありますが、ここでは任意に行われたとします)。

当事者の合意については、優越的地位の濫用ガイドラインにも個別に規定した個所がありますが、代金の減額に関する個所については触れられておりませんので、おそらく、任意であっても合意したというだけでは、優越的地位の濫用の代金の減額に該当することになる(該当する場合がある)と考えているものと思われます。

しかしながら、競争政策は効率性の問題であり、任意に事業者が判断したとすれば、それは尊重されるべきであって、法が公平性の観点から後見的に介入する必要はないと思います。

従って、任意に同意したことに対して、優越的地位の濫用を問題にするべきではないでしょう。

このように考えると、下請法と独占禁止法とで結論が異なることになりますが、法律が異なるので、結論が異なること自体は問題はないと思います。

ただ、これでは、勧告に従わずに済ます親事業者が出てくることになり、取り締まる側からすれば困ることになるかも知れません。

前述のとおり、おそらく公正取引委員会は、任意に合意したとしても、それだけで優越的地位の濫用に該当しないという扱いはしないという立場だと思います。これはこれで一貫しており、結論が異なるという結果も回避できるのでいいのかも知れません。

しかしながら、このような公平性を重んじるやり方が行き過ぎると、取引への過度の介入になり、結果的に効率性が損なわれることになるといわざるを得ないでしょう。

判断の分かれるところだと思いますが、私見では、任意に合意した場合、下請法も優越的地位の濫用もともに問題にしない、とすべきではないかと考えます。

 

下請法と優越的地位の濫用について①

2012-04-12

年度末の3月27日から30日にかけて、公正取引委員会は立て続けに3件、下請法違反による勧告を行いました。

いずれも下請代金の減額の禁止に違反したもので、内容的にはよくあるものですが(勧告の対象はほとんどすべてが下請代金の減額の禁止違反です)、いずれの親事業者も、下請事業者に対して下請代金の減額を要請し、それを了承した下請事業者に対して、下請代金の減額を行ったというものです。

http://www.jftc.go.jp/pressrelease/12.march/12032702.pdf

http://www.jftc.go.jp/pressrelease/12.march/120328.pdf

http://www.jftc.go.jp/pressrelease/12.march/120330.pdf

下請事業者の了解があっても、親事業者が禁止事項に該当する行為を行えば下請法の違反であるというのが公正取引委員会の立場なので、これはある意味当然なのですが、敢えて「了承した下請事業者」としているところからすると、了承しなかった下請事業者に対しては減額を行わなかったようです(もっとも、これら以外の減額の事案についても、ほとんどこのような表現が用いられていることから、単なる定型的な表現であって、余り深い意味はないかも知れませんが)。

とすると、了承するか否かの判断を下請事業者に委ね、了承しなかった下請事業者に対しても特段の不利益等が与えられていなければ、減額を了承した下請事業者は、任意に了承したものと考えられます。

ということは、公正取引委員会は、仮に下請事業者が全くの任意で減額に応じたとしても、下請法違反になると考えていることになります。このことは、公正取引委員会と中小企業庁の作成した下請法のテキストの以下のような記述からも分かります。

Q58: 下請事業者から当月納入分を翌月納入分として扱って欲しいと頼まれ、下請代金も翌月納入されたものとみなして支払ったところ、支払遅延であるとの指摘を受けたが問題となるか。

A: 本法の適用については、下請事業者との合意は問題とならない。下請事業者との合意の有無に関係なく、下請代金は受領した日から起算して60日以内に定めた支払期日までに支払わなければならない。

ところで、勧告に従わないとどうなるのでしょうか。下請法8条では、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)第20条(排除措置)及び第26条の6(優越的地位の濫用に係る課徴金)の規定は、公正取引委員会が前条第1項から第3項までの規定による勧告をした場合において、親事業者がその勧告に従ったときに限り、親事業者のその勧告に係る行為については、適用しない。」となっていますから、勧告に従わない場合、勧告の対象となった行為について、独占禁止法上の優越的地位の濫用の禁止にも該当するのであれば、排除措置命令が出され、場合によっては課徴金が課されることになるということになります(寡聞にして、そのような勇猛果敢な親事業者の事例を知りませんが・・・)。

下請代金減額の場合、優越的地位の濫用でいうと、独占禁止法2条9項5号ハが対応することになります。

ここまではいいとして、では、下請事業者が任意に応じた下請代金の減額が下請法に違反するとしても、優越的地位の濫用にも該当することになるのでしょうか。

これを次回に検討してみたいと思います。